声明談話・大会決議など
すべての国民・労働者の生活改善、格差是正をめざし、よりいっそう奮闘しよう(談話) ~2025年人事院勧告にあたって~
2025年8月8日
国土交通労働組合
書記長 後藤 智春
人事院は8月7日、国会と内閣に対し、国家公務員の給与に関する勧告・報告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。今回の給与勧告では、民間給与が国家公務員給与を上回る官民較差があるとして、月例給を平均15,014円(3.62%)、一時金は0.05月分(年間4.65月分)、それぞれ引き上げる内容などが盛り込まれました。4年連続の月例給、一時金の引き上げは、25春闘において、全国の多くの労働者が国民春闘共闘委員会・全労連に結集し、ストライキ権など憲法で保障された労働者の権利を確立・行使し、官民一体で奮闘しあった結果であり、あらためて、全国のなかまに対し、深く敬意を表するものです。
なかでも、月例給の引き上げは、34年ぶりに3%を超える改定率となり、若年層の給与改善に重点を置きつつも、中高年齢層においても昨年を上回る改定額となりました。さらに、諸手当では、マイカー通勤にかかる通勤手当や特地勤務手当等における改善措置などが盛り込まれており、私たちは、この間の粘り強い運動が要求前進を勝ちとったことに確信と展望を持つことが必要です。しかしながら、長引く物価上昇のもとで、これらの措置が実施されても、依然として生活改善に遠く及ばないほか、昨年の勧告において強行された不利益変更が解消されておらず、将来展望が持てない状況は変わっていません。くわえて、再任用職員や定員外(非常勤)職員における処遇の格差も依然として解消されておらず、大いに不満が残る内容となっています。
今回の勧告・報告にむけては、3月に公表された人事行政諮問会議の最終提言を具体化する施策・方向性が打ち出されています。このうち、官民較差算出にかかる比較企業規模については、2006年に50人以上に引き下げた内容を100人以上に戻す一方、本府省職員においては、500人以上を1,000人以上に引き上げており、中央と地方の格差を拡大させる措置となっています。しかし、私たちは全国津々浦々で広範囲かつ国民の安全・安心に密接に関連する業務を担うことによって国土交通行政を支えており、地方支分部局の職員も含め、早急に1,000人以上に引き上げるべきです。さらに、地域別最低賃金の引き上げや全国一律最低賃金制度の実現など、地域間格差の是正が求められるなかで、昨年の勧告にともなう地域手当の見直しにくわえて、中央と地方の格差拡大につながる措置が講じられることは、私たちはもちろん、国民の願いにも逆行するものといわざるをえません。
また、公務員人事管理に関する報告では、さらなる能力・実績主義の強化が強調されているほか、超過勤務の縮減にむけたとりくみが掲げられています。いま、私たち国土交通行政を担う多くの職員は、限られた要員のもとで、業務が複雑・困難化し、長時間過密労働が横行するなど、職場が疲弊するなかにおいても、懸命に業務を遂行しています。こうしたもとで、近年、中途退職者や心身を患う職員が後を絶たず、今後、国民が求める行政サービスを着実に執行するためには、能力・実績主義の強化ではなく、給与等の処遇の大幅な改善や労働時間の短縮、さらには大幅増員などの措置を早急に講ずるとともに、一人ひとりが意欲とやりがいを持っていきいきと働き続けられるよう、職場の魅力を高める必要があります。
この間、国内において、賃金引き上げにむけた流れが広がる一方で、来年以降、トランプ政権の高関税政策が水を差すことも懸念されています。こうしたもとで、労働者全体の賃金引き上げや格差是正、そして、わが国の経済を回復させるためには、持続的な賃金引き上げを実現させる必要があります。そのためにも、人事院がくり返し主張する「民間準拠」に固執する姿勢を脱却し、900万人以上の労働者に影響する公務員賃金を改善するとともに、中小企業に対する経済的支援、正規労働者と非正規労働者の均等・均衡待遇の実現など、日本の低賃金構造を固定化させている根本的な問題点を早急に解消する必要があります。
今回の勧告では、不十分ながらも俸給表全体の改定や通勤手当の改善などが盛り込まれる一方で、今後は人事院勧告における改善部分の早期実施、定員合理化計画の中止と大幅増員の実現など、労働条件の改悪を許さず、さらなる改善につなげるよう、秋季年末闘争を強化する必要があります。
国土交通労組は、引き続き、交通・運輸、建設産業の労働者、公務・公共サービスにかかわる労働者とともに、公務労働者の労働条件改善はもとより、すべての国民・労働者の生活改善にむけて、官民共同、さらには、国民的たたかいを大きく広げ、賃金・労働条件改善をはじめとする諸要求の実現をめざします。そのためにも、全国のなかまをはじめ、すべての労働者のみなさんに私たちの運動への結集を呼びかけます。
以上