声明談話・大会決議など

政府・国土交通省の責任で、空の安全・安心をまもる対策の強化を(声明)

政府・国土交通省の責任で、空の安全・安心をまもる対策の強化を(声明)
~羽田空港航空機衝突事故から1年が経過して~


 2024年1月2日に東京国際空港(以下、羽田空港)で発生した日本航空516便と海上保安庁機の衝突事故から1年が経過し、あらためて犠牲になられた海上保安庁職員5名の方々とそのご家族に対し、深い哀悼の意を表します。また、この事故で負傷された方々に、こころより、お見舞いを申し上げます。
 事故発生後、国土交通労働組合は、このような不幸な事故を二度と引き起こさないため、各方面の方々と共同のとりくみをすすめてきました。こうしたなかで、航空管制官が圧倒的に不足している実態や疲労管理の問題が国会で繰り返し取り上げられるなど、多くの問題点が明るみになりました。私たちは事故発生以前から、航空管制官の人的体制の強化・拡充を政府及び国土交通省に対して強く求めてきましたが、政府の定員合理化政策のもとで、十分に措置されてきませんでした。このような実態は羽田空港に限らず、全国の多くの空港・航空交通管制部において生じています。疲労管理をめぐっては、航空管制官が不足するもとで、トイレや給水等で一時的に離席しても、それを休憩時間として見なされるなど、システムが十分に機能していない状況が続いています。こうした現状は国会でも審議され、羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会における「中間取りまとめ」(2024年6月24日公表)に航空管制官の人的体制の強化・拡充が盛り込まれました。これを受けて航空局は、2024年7月31日に航空管制官の緊急増員をはじめ、航空保安大学校の管制官採用枠の拡大や中途採用の実施等、増員にむけた具体策を講じてはいますが、私たちが必要とする航空管制官の増員は、航空管制官の育成にかかる研修体制の物理的制限から1年や2年で充足されるものではなく、中・長期的な計画のもとですすめるべきものです。したがって、私たちは、今後も空の安全をまもり、国民が安心して航空機を利用できるよう、航空管制官の定員配置を要求するとともに、それに伴う採用計画を注視していきます。また、航空管制官のみならず、現場を支える航空にたずさわるすべての職員のさらなる処遇改善を求めていきます。
 一方、運輸安全委員会は2024年12月25日に「経過報告」を公表しました。その内容は、これまで判明した事実と、今後の調査・分析の方向性を示したものですが、特筆すべきことは「3.9 本経過報告の取扱いについて」にて、「調査のために真摯に情報を提供した関係者を保護するため」と記し、さらには、「事故等の調査は責任を問うために行うものではない」と明記されている点です。報告書の冒頭の記述は事故調査報告書で使われる定型文ではあるものの、文末で再度繰り返されていることは、個人の責任が追及されてしまう現状が真の航空の安全を阻害してしまう問題が存在するからにほかならないことを示すものと考えます。日本における現在の法体系では、事故に関与した労働者個人に責任が問われてしまうことから、航空分野に限らず、あらゆる産業において、事故原因をすべて明らかにし、真に実効性のある再発防止策を講じるためには、その障壁となる「航空事故調査委員会設置法案に関する覚書」(1972年2月交換)の撤廃や、関連する法律の改正が必要であると考えます。
 私たち、国土交通労働組合は、より高度な安全を構築するためにも、共闘組織はもとより、国民のみなさまとともに、個人責任の追及を許さず、事故の真の原因究明と再発防止にむけたとりくみを今後よりいっそう、強化することを表明します。

2025年1月22日
国土交通労働組合 中央執行委員長
山﨑 正人

【見解】運輸安全委員会経過報告を受けて

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