声明談話・大会決議など

労働条件の不利益変更を許さず、すべての国民・労働者の生活改善をめざし、奮闘しよう(談話)

2024年8月9日

                                  国土交通労働組合      

                                    書記長 後藤 智春

 

 人事院は8月8日、国会と内閣に対し、国家公務員の給与に関する勧告・報告及び公務員人事管理に関する報告、国家公務員の育児休業法の改正に関する意見の申し出を行いました。今回の給与勧告では、民間給与が国家公務員給与を上回る官民較差があるとして、月例給を平均11,183円(2.76%)、一時金は0.10月分(年間4.60月分)、それぞれ引き上げる内容などが盛り込まれました。3年連続の月例給、一時金の引き上げは、24春闘において、全国の多くの労働者が国民春闘共闘委員会・全労連に結集し、ストライキ権など憲法で保障された労働者の権利を確立・行使し、官民一体で奮闘しあった結果であり、あらためて、全国のなかまに対し、深く敬意を表するものです。

 

 月例給の引き上げは、32年ぶりに2%を超える改定率となり、若年層の給与改善に重点を置きつつ、中高年層を含めた俸給表全体の改定となったとはいえ、34か月連続の物価上昇のもとで、依然として生活改善に遠く及ばないほか、将来展望が持てないものとなっています。くわえて、「給与制度のアップデート」として、通勤手当等の支給限度額の月15万円への引き上げとその範囲内での特急料金の全額支給、再任用職員の手当拡大(地域手当の異動保障、住居手当、特地勤務手当、寒冷地手当等)など、私たちの切実な要求が一定反映される一方で、さらなる能力・実績主義を助長する改悪等が盛り込まれたことは、容認できません。さらに、マイカー通勤にかかる通勤手当の改善や定員外(非常勤)職員の生活関連手当の支給が見送られるなど、大いに不満が残るものとなっています。このほか、地域手当の大くくり化や配偶者にかかる扶養手当の廃止、寒冷地手当の見直しにおいて、不利益変更が一方的に強行されたことは、断じて認められません。

 

 私たちはこの間、一貫して「誰一人の賃下げも許さない」立場で、人事院に対し、労働者本位の給与改善を求めるとともに、「給与制度のアップデート」をはじめとする勧告内容について、労働組合との交渉・協議を尽くすよう、全国の職場から要求決議を数次にわたり集中したほか、中央及び地方段階での交渉、さらには7・24中央行動において全国から上京団を配置するなど、職場のなかまの声をくり返し訴えてきました。

 しかし、私たちの労働基本権制約の代償機関であると同時に職員の利益擁護機関である人事院は、全国のなかまの切実な声を無視して、職員の不利益変更をともなう勧告を労働組合との合意や納得もなしに一方的に強行したことは言語道断であり、強い憤りを禁じ得ません。私たちはあらためて、人事院に強く抗議するとともに、不利益変更の撤回と公務員の労働基本権の全面回復を強く求めるものです。

 

 いま、私たち国土交通行政を担う多くの職員は、能登半島地震や羽田空港での航空機衝突事故など、相次ぐ自然災害への対応や重大事故の防止をはじめとする国民の安全・安心の確保、2024年問題や困窮する国民生活を支える各種業務など、限られた要員のもと、業務が複雑・困難化し、長時間過密労働が横行するなど、職場が疲弊するなかにおいても、懸命に業務を遂行しています。こうしたなかで、人事院も国家公務員の人材確保が依然としてきびしい状況にあることを認識しており、今後、公務を支える職員を確保し、国民が求める行政サービスを着実に執行するためにも、いまこそ、一人ひとりが意欲とやりがいを持っていきいきと働き続けられる職場環境を整えることが不可欠であり、そのためにも、公務職場の魅力を高める必要があります。

 さらに、昨今、経済界から現行の人事院勧告制度の見直しの必要性などに言及する声が出されるもとで、人事院がくり返し主張する「民間準拠」に固執する姿勢からの脱却にくわえて、給与改善のための「原資」を確保するなど、日本の低賃金構造を固定化させている根本的な問題点を早急に解消する必要があります。このことは、労働者全体の賃金引き上げ、ひいては、わが国の経済回復につながるものであり、政府の責任において、実現させるべきものです。

 

 今回の勧告では、不十分ながらも俸給表全体の改定や通勤手当における特急料金を含む支給限度額の引き上げ、再任用職員の手当拡大など、要求が反映された内容もあり、私たちは、この間のとりくみに確信と展望を持つことが重要です。その一方で、今後、人事院勧告の取り扱いや、新たな定員合理化計画などに対し、労働条件の改悪を許さず、改善につなげるよう、秋季年末闘争を強化する必要があります。

 国土交通労組は、引き続き、交通・運輸、建設産業の労働者、公務・公共サービスにかかわる労働者とともに、公務労働者の労働条件改善はもとより、すべての国民・労働者の生活改善にむけて、官民共同、さらには、国民的たたかいを大きく広げ、賃金・労働条件改善をはじめとする諸要求の実現をめざします。そのためにも、全国のなかまをはじめ、すべての労働者のみなさんに私たちの運動への結集を呼びかけます。

 

以上

2024年人事院勧告(談話)

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