国土交通労働組合
書記長 笠松 鉄兵
本日、人事院は国会と内閣に対し、一般職国家公務員の給与等に関する勧告及び報告並びに公務員制度改革等に関す
る報告を行いました。その主な内容は以下のとおりです。
① 俸給表上の給与額での官民給与格差(△
0.07 %)が小さいことから月例給・一時金とも改訂を見送る
② 50 歳代後半層において昇格・昇給制度の見直しを実施し、給与抑制をはかる
今年の勧告は、人事院勧告にもとづかない憲法違反の「給与改定・臨時特例法(賃下げ法)」の成立が強行され、4
月から国家公務員給与が平均で
7.8 %引き下げられるという極めて異例な事態のなかでの勧告となりました。
この間、私たちは人事院に対し、賃下げ後の実際の給与支給額を民間給与と比較したうえで、「給与回復・改善勧告」
をおこなうよう強く求めてきました。しかし、人事院は実際の給与支給額での官民比較において7.67 %の較差を調査・
確認しておきながら、そのことに目をつむり、労働基本権制約の代償機関という立場を投げ捨て、政府・財界に迎合し
た勧告・報告を行ったことは到底認めることはできません。
私たちの職場は連年にわたる定員削減や新規採用抑制による慢性的な要員不足、業務の複雑・高度化がすすみ、非常
に厳しい職場実態のなかでも震災被災者の生活再建や震災復興、新潟、福島の豪雨、最近の九州北部豪雨といった自然
災害、関越自動車道高速ツアーバス事故への対応をはじめ、国民の安全・安心を守るために全国各地で職場の総力をあ
げて奮闘しています。こうしたなかで、国土交通省に対して国民のみなさんから「大変頼りにしている」といった声が
多数寄せられています。
しかし、人事院は、このような公務職場で働く労働者の奮闘に報いるどころか、中立第三者機関としての立場を投げ
捨て、政府の一員として、「未曾有の国難に対処するため」と憲法違反の「賃下げ法」による賃下げを容認するととも
に、政府・財界が遮二無二すすめる国民犠牲の「社会保障・税の一体改革」の露払いとして「総人件費削減」を強行す
る政府に追従し、「存在感」を示そうとしています。
他方、政府は今年3月に人事院が公表した「退職給付に係る官民比較調査結果及び見解」、共済年金職域部分と退職
給付に関する有識者会議における「中間的な議論の整理」を踏まえ、平均402 万6千円の官民較差があることをこと
さら強調し、まともな説明もないまま退職手当の大幅な引き下げの閣議決定を強行しました。このことは、賃下げは民
間準拠を無視して強行する一方で、退職手当の引き下げは民間準拠のみを盾に実施するという矛盾に満ちたものであり、
こうした暴挙を断じて許すことはできません。
これらのことからも明らかなとおり、もはや人事院勧告は労働基本権制約の代償措置とは言えず、国公法での交渉に
おいても労働組合の要求は聞くだけで、政府・使用者の提案がそのまま強行される実態から、ILO 勧告に沿った基本的
人権としての労働基本権の回復が急務の課題となっています。私たちは、労働基本権の回復に道筋をつけるためにも立
ち上がった、「公務員賃下げ違憲訴訟」を8月2日にスタートさせ、国公労連を中心に奮闘しているところです。
一方、国民から求められているのは福島第一原発事故を含む東日本大震災からの復旧・復興をはじめ、国民の生活と
権利、安全・安心を守るための公務・公共サービスの充実による生活改善です。しかし、政府・財界に迎合し、今回、
「賃下げ法」による引き下げ分を回復する勧告を行わなかったことは、この間指摘したとおり、震災からの復旧・復興
はおろか、
625 万人の労働者、とりわけ地域経済に多大な悪影響を与え、ひいては日本経済をさらに悪化させること
に拍車をかけ、国民の要求から逆行するものとなります。
国土交通労働組合はこうした人事院の姿勢と政府・財界の策動を許さず、常勤・非常勤職員、業務委託職員など国土
交通省内すべての労働者をはじめ、交通・運輸産業、建設産業で働く労働者、公務・公共サービスに関わる労働者とと
もに、官民共同の広範なたたかいをくり広げ、大きな国民世論を築くことで要求実現をめざします。
組合員のみなさんをはじめ、国土交通省内に働くすべての労働者のみなさんへ国土交通労働組合の今後の運動への結
集を呼びかけます。
= 以 上 =