国土交通労働組合
書記長 笠松 鉄兵

9 月30 日、人事院は国会と内閣に対して一般職国家公務員の給与等に関する勧告及び報告、定年延長に係る意見の
申出を行いました。その主な内容は以下のとおりです。
①月例給は0.23%(▲899 円)の官民較差があるとして、50 歳代を中心に40 歳台まで俸給表をマイナス改定す

②一時金も本来なら0.05 月の引き上げとなるものを東北3県のデータがないこと等を口実に据え置く
③高齢層における官民の給与較差是正を理由に現給保障を廃止する
④定年延長に伴う賃金水準を60 歳前の70%とする意見の申し出を行った
⑤「給与構造改革」にともなう経過措置の廃止
以上のように、東日本大震災からの復旧・復興をはじめ、全国で国民のために行政を支えて奮闘している職員の労苦
に報いるどころか、中立第三者機関としての立場を投げ捨てて3年連続のマイナス勧告を行ったことは断じて認めるこ
とができません。
この間、私たちの賃金は1999 年から大きく引き下がっています。2005 年までは、国内の景気悪化などの原因に
より民間労働者の賃金が下がったことが原因で私たちの賃金が引き下げられてきました。しかし、2005 年 6 月に閣
議決定された「骨太方針 2005」で公務員の給与体系の見直しと地域の民間給与水準の的確な反映が人事院に対して
要請され、その年の人事院勧告で「給与構造見直し」と「地域給」などが導入されました。その後も、比較企業規模の
見直しで賃金の引き上げを阻止し、今年の人事院勧告ではこれまで盾としてきた「民間準拠」まで投げ捨て、一時金の
引き上げすら行わない状況となっています。この動きを見れば人事院の役割が国家公務員の労働基本権の代償機関から
政府・財界の総人件費削減政策を先導する機関に変貌していることが明白となり、今年の勧告は、その役割を担った、
政府・財界の政策に迎合した政治的な勧告です。
また、定年延長課題では、単純な「民間準拠」で官民の賃金格差をことさら強調し、60 歳代の年間給与水準の一律
引き下げ、定年前の短時間勤務制度や本省を中心にした役職定年制の導入等を提起しています。
職務・職責が変わらないにもかかわらず、60 歳を境に賃金を引き下げることは、職務給原則などに反するとともに、
年齢差別に他なりません。合理的・科学的なデータも示さず、納得できる説明も行わないまま「意見の申出」を強行し
たことは、人事院が従来から私たちに示していた人事行政の「哲学」を自壊させるものとなっています。
いま、国民から求められているのは東日本大震災からの復旧・復興をはじめ、国民の生活と権利、安全・安心を守る
ために公務・公共サービスの充実です。しかし、今回の勧告は日本における様々な困難や東日本大震災からの復旧・復
興などに国民全体で立ち上がっているさなか、625 万人の労働者、とりわけ地域経済に多大な悪影響を与えることが
検証されており、引き下げ勧告は国民の願いから逆行するものです。
また、継続審議となっている「給与の臨時特例法案」や労働基本権「付与」をはじめとする「国家公務員制度改革」
などの公務員攻撃を露払いにし、国民には「復興財源」の大義名分で大増税がねらわれています。
国土交通労働組合はこうした人事院の姿勢と政府の策動を許さないために、常勤・非常勤職員、業務委託職員など国
土交通省内すべての労働者をはじめ、交通・運輸産業、建設産業で働く労働者、公務・公共サービスに関わる労働者と
ともに、官民共同の広範なたたかいの輪を広げ、大きな国民世論を築くことで要求実現をめざします。
組合員のみなさんをはじめ、国土交通省内に働くすべての労働者のみなさんへ国土交通労働組合の今後の運動への結
集を呼びかけます。

= 以 上 =