~軽井沢でのスキーバス事故にあたって~
国土交通労働組合
書記長 山﨑 正人
去る1月15日午前2時頃、長野県軽井沢町の国道18号碓氷バイパス入山峠付近において
発生したスキーバス事故は、大学生を中心とした乗客13人と乗員2人が死亡、26人が重軽
傷を負うという、痛ましい事故となりました。
国土交通労働組合は、亡くなられた方々とご遺族に謹んで哀悼の意を申し上げるとともに、
負傷された方々の一日も早い回復を心から願っています。そのうえで、このような悲惨な事
故をふたたび繰り返さないためにも、事故調査にあたっては、単に犯人捜しに終わらせるこ
となく、その背景も含めて、徹底した原因究明を行うとともに、実効性のある具体的な対策
を早急に講ずるよう、政府及び関係機関などに対し、強く求めるものです。
報道では、今回の事故を起こした貸し切りバス事業者のずさんな運行管理の実態にくわえ
て、格安ツアーを企画した旅行会社が国の基準を大幅に下回る価格で当該事業者に運行を発
注したことなどが明らかとなっています。これらの背景には、行き過ぎた規制緩和が内在し
ており、そのことによる事業者間での過当競争が激化し、事業者の遵法精神が欠如するもと
で運賃・料金のダンピングが横行しています。こうしたもとで、運転者(労働者)の労働条
件は著しく悪化しているほか、昨今では運転者不足や運転者の高齢化も深刻化しており、安
全・安心が脅かされる事態に拍車をかけています。
さらに言えば、こうした規制緩和は、貸し切りバスに限らず、タクシー、トラック、航空
など、すべての交通運輸分野において導入されており、これを推進してきた政府及び監督官
庁である国土交通省、厚生労働省などの責任はきわめて重大であると考えます。
こうしたなかにあっては、参入及び安全規制の強化や交通運輸事業者への監査体制の強化
などが急務となっていますが、政府は総人件費削減の名のもとで、国家公務員の大幅削減を
強力に推し進めようとしているほか、新規増員をきびしく絞り込んでいます。その一方で、
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等も見据えて、サイバーセキュ
リティの整備やテロ対策等を含めた外交実施体制の整備など、内閣の重要政策を推進する体
制の整備を重点化することとしているほか、新たな規制緩和を推進しようとしています。
これらのことは交通運輸における安全・安心を確保し、事故を未然に防止する観点からい
っても、これに逆行する愚策だと言わざるを得ません。
私たちは、これまで、こうした政策が、国民の安全・安心を脅かすものであることから、
交通運輸の職場で働く民間の労働者と共闘してこれに強く反対するとともに、国民の安全・
安心を守る国土交通行政の拡充を求めてきました。
しかし、政府は私たちの声に耳を傾けることなく、財界やアメリカの意向に沿って国民犠
牲の「構造改革」をすすめるなかで、規制緩和や公務・公共サービスの切り捨てをよりいっ
そう強力に推し進めようとしています。
私たちは、二度とこのような悲惨な事故を起こさないためにも、行き過ぎた規制緩和の抜
本的な見直しと、国民の安全・安心を守る国土交通行政の拡充を求め、交通運輸労働者はも
とより、利用者である国民のみなさんと共同し、ともにたたかいぬく決意です。
以 上