気象庁は、2013 年4月から 10 か所の大都市拠点空港を除き、地方にある 44 か所の「空港
出張所」および「空港分室」を順次航空気象観測所に移行させ、当該地の航空気象観測業務
を民間業者に委託することを決定した。
気象観測業務は、これまで発着回数の少ないRAG(遠隔による航空機への情報提供業務)
化されている 29 か所の空港に限定して、業務委託を行ってきた経緯があるが、今回の委託化
方針では発着回数も多く、航空管制官や航空管制運航情報官が配置されているにもかかわら
ず、全国すべての空港出張所および空港分室の気象観測業務を 2016 年度までに民間委託して
いくものとなっている。
委託方式についても、これまでは、観測データは、気象庁職員がその内容をチェックし、
確認した上で、気象庁の責任において情報提供が行われてきたが、本年4月以降は、委託し
た民間業者の観測員が航空気象観測を行うだけでなく、気象庁職員のチェックを受けずに直
接航空ユーザーに情報が提供されることとなる。加えて、委託業者が毎年の一般競争入札に
より決定されるため、年度ごとに業者が変わることも十分想定される。これでは観測員の継
続性が担保できず、培われた知識や経験も失われ、迅速かつ正確な情報提供に支障をきたす
ことは明らかである。
さらに、これまで現地空港で気象庁職員が行ってきた気象の解説業務も、遠隔地にある地
域航空気象官署から電話で行うことになり、距離が離れた空港の気象状況が、正確に解説で
きるのかなど懸念する声が職場内外からあがっている。
このように、今回の委託化は多くの問題点が指摘され、航空機の安全・安心な運航が脅か
されるおそれがあり、航空機利用者や航空乗務員への重大な影響を及ぼすことから断じて容
認できない。
言うまでもなく、航空機の安全運航にとって気象観測データは非常に重要なものである。
とくに悪天時においては、時々刻々変化する空港周辺の正確な観測データは、離発着する航
空機にとって欠かすことのできないものである。気象の急変による航空機事故がもし発生す
れば、直接、乗客・乗員の命に関わる重大な事態となる。
このような事態を起こさないためにも航空気象観測業務は国の責任で行うべきであり、航
空機利用者と乗員の安全・安心を守るため、航空機の安全運航に重大な影響を及ぼす気象観
測業務の委託化には断固反対する。
このことは、私たちだけではなく、「航空の安全を最大の課題にし、事故の撲滅をはかるこ
と」を目的に、航空・気象行政等にかかわる公務労働者やパイロット・グランドハンドリン
グなどの民間航空労働者で組織している「航空安全推進連絡会議」からも気象庁に対して度
重なる要請が行われ、指摘されてきた。
私たちは、航空気象観測業務の委託化は直ちに中止し、国が直接、責任を持って気象庁職
員を配置し、精度の高い、正確で信頼のできる航空気象観測業務を行っていくことを改めて
強く要求するとともに、国民の安全・安心を守る国土交通行政の拡充にむけ、中央・地方で、
利用者である国民と共同し、ともにたたかっていくことを表明する。