職員の切実な声に背をむけ、生活改善に不十分な勧告に抗議する(談話)
~2018年人事院勧告にあたって~
2018年8月13日
国土交通労働組合 書記長 山﨑 正人
人事院は8月10日、国会と内閣に対し、国家公務員の給与等に関する勧告と報告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。具体的には、655円(0.16%)の官民較差があるとして、初任給を1,500円、若年層には1,000円程度、その他の職員については400円を基本として、それぞれ引き上げるとしたほか、一時金を0.05月分引き上げるものであり、5年連続の賃上げとなっています。
これは、私たちが格差と貧困の解消にむけて全労連・国民春闘共闘委員会に結集し、大企業の社会的責任を追及し、雇用の安定とすべての労働者の賃金引き上げをめざして2018年春闘を官民共同で旺盛にたたかってきたことの大きな到達点です。
しかし、その内容は、「給与制度の総合的見直し」に伴う現給保障の廃止や扶養手当の改悪、退職手当の引き下げ、宿舎使用料の値上げなどが強行されるなかで、中堅・高齢層には何一つ配慮していないといわざるをえません。私たちの生活が悪化の一途をたどり、このようなきわめて低額な改定では、抜本的な生活改善はほど遠いものとなっています。すべての層が生活改善できる政策的な賃上げなどの私たちの要求をまったく顧みない人事院の姿勢は、労働基本権制約の代償機関という責任を放棄したに等しいものであり、国土交通労組はその姿勢に断固抗議します。また、職場の強い要求である通勤手当と住居手当の改善を見送ったことは、大いに問題があります。
定員外(非常勤)職員に関しては、現行制度の抜本改善と処遇改善を求め、雇用の安定や均等待遇の実現を訴えてきました。それにより、慶弔にかかわる休暇が認められる方向になったことはひとつの到達点であるものの、私たちが強く要求してきた無給休暇の有給化や夏季休暇の措置は見送り、諸手当などの均等待遇についても、政府の同一労働同一賃金ガイドラインが「案」であることを理由に必要な措置を見送っています。
また、無期転換制度の導入や更新にかかる公募要件の撤廃などにもまったく応えず、給与も事実上勧告の埒外におかれたままであり、きわめて不満の残る内容となっています。
私たちは、政府が「同一労働同一賃金」、「均等待遇」の実現を言及するもとで、人事院に対し、雇用の安定といっそうの労働条件改善を強く求めるものです。
再任用職員に関して、はじめて定員内職員と同様に一時金の改善をはかることとしています。その一方で、生活関連手当等の支給や退職前の年休の繰り越しなどにはまったく応えておらず、再任用職員の生活を蔑ろにしているといわざるをえません。
公務員人事管理に関する報告では、長時間過密労働の是正について、超過勤務命令の上限を人事院規則において原則1月45時間・1年360時間(他律的業務の比重の高い部署においては1月100時間・1年720時間等)を設定するなどの措置が言及されています。上限規制を人事院規則に組み込むことは一定評価できるものの、過労死ラインの超過勤務を可能にする特例がある以上、手放しで喜べるものではありません。上限規制が実効性を帯びた厳格な運用とそれを可能とするための客観的な勤務時間管理の義務化をはじめ、窓口受付時間設定の制度化、インターバル規制の導入など長時間労働の是正にむけて実効性のある対策を引き続き求めるものです。
定年延長については、定年年齢を65歳まで段階的に引上げる申出を行いました。しかしその内容は、役職定年制の導入や60歳超職員の年間給与を実質的に「賃金構造基本統計調査」の結果だけをもって60歳前の7割の水準への引き下げ、現行再任用制度と同様の問題を抱える定年前の短時間再任用の導入、加齢困難職種への特別措置を盛り込まないことなど、問題が山積しています。検討に際して「職員団体や各府省の意見も聴きながら検討する」としていたものの、結果として私たちの要求はほとんど反映させず、「耳を傾けた」という口実づくりに邁進した人事院の姿勢に対し、厳重に抗議します。
私たち国土交通労組は、交通・運輸、建設産業の労働者、公務・公共サービスにかかわる労働者とともに、官民共同のたたかいを広げ、大きな国民世論を築くことで公務労働者の労働条件改善はもとより、すべての労働者の賃金・労働条件改善をはじめとする要求の実現をめざします。
そのためにも、引き続き全国の組合員のみなさんをはじめ、国民や国土交通省内のすべての労働者のみなさんに私たちの運動への結集を呼びかけます。
= 以上=