去る12月2日、中央自動車道・笹子トンネルで天井板崩落事故が発生し、9名
もの尊い人命が失われた。国土交通労働組合は、犠牲者のご冥福をお祈りするとと
もにご遺族には心からお悔やみを申し上げます。
今回の事故は、天井板を支える固定ボルトが抜け落ち、連続して天井板が崩落し新規追加
たとの発表がされているが、1977年にトンネルが建設されて35年もの期間が経過
しているにもかかわらず、十分な点検が行われてこなかったことが明らかになって
おり、人災と言わざるをえない。その詳細な原因については、今後、国土交通省の
調査・検討委員会をはじめ、警察の検証が本格的に行われ、明らかにされる見通し
となっている。一方、こうした原因究明と併行し、国土交通省は高速道路会社や国
土交通省の道路関係官署に対して、同様の構造を持つトンネルの緊急点検の実施を
指示している。
これまで私たち国土交通労働組合は、今般のトンネル事故にとどまらず、高度成
長期に集中的に整備された土木・建築構造物が今後、老朽化により崩落、崩壊など
の危険が増すことを指摘するとともに、政府・国土交通省に対し、早急に具体的な
対策を講ずるよう、重ねて警告してきた。
私たちのこうした指摘にもかかわらず、今回のような事故を未然に防ぐことがで
きなかったのは、国民の命を守るためには、十分な点検や維持・修繕をすることが
必要不可欠であるにもかかわらず、道路公団を民営化するなど、コスト縮減と新設
による整備効果を優先してきた政治や行政の責任といわざるを得ない。
こうした痛ましい事故を二度と繰り返さないためには、今回の事故の徹底的な原
因究明をするとともに、点検・修繕を行うことはもちろん、新たに建設する構造物
においても十分な安全思想にもとづき、設計・施工すべきである。また、構造物に
「寿命」がある以上、危険を予測し、修繕などにより回避することが必要である。
そのためにも、
施設点検の法制化や点検技術の開発・研究は欠かすことはできない。
そして、国、地方を問わず、大規模な社会資本整備に予算を投入する公共事業で
はなく、何よりも国民の生命を守ることを最優先に、公共性の高い施設の点検体制
の確保や維持・修繕などを重視する公共事業に転換することが必要である。
私たち国土交通労働組合は、国民の生命を守る公共事業への転換とそのための予
算配分の見直しや点検、管理体制の充実のために、引き続き広範な国民と連帯して
運動を強めていくものである。
2012年12月7日
国土交通労働組合 書記長 笠松 鉄兵