~2017年人事院勧告にあたって~
2017年8月8日
国土交通労働組合 書記長 山﨑 正人
人事院は8月8日、国会と内閣に対し、国家公務員の給与等に関する勧告と報告及び公務員人事管
理に関する報告を行いました。具体的には、平均631円(0.15%)の官民較差があるとして、初任給
を1,000円、若年層にも同程度、その他の職員については400円をそれぞれ引き上げるとしたほか、
一時金を0.1月分引き上げるものであり、4年連続の賃上げとなっています。
これは、私たちが格差と貧困の解消にむけて全労連・国民春闘共闘委員会に結集し、大企業の社会
的責任を追及し、雇用の安定とすべての労働者の賃金引き上げをめざして2017年春闘を官民共同で旺
盛にたたかってきたことの大きな到達点です。
しかし、その内容は、物価上昇や社会保障の引き下げなどで私たちの生活が悪化の一途をたどるも
とで、抜本的な生活改善にはほど遠いものとなっています。さらに2015年度から強行されている「給
与制度の総合的見直し」に伴う、現給保障廃止による賃下げを回避する措置について全く言及されて
いないことは、職場の切実な声に背をむけるものであり、断じて認めることはできません。さらに、
賃下げ回避のために高齢層にも厚く積むべきとしてきた私たちの要求には応えず、経過措置の廃止等
に伴って生ずる原資の残余分を用いて、若年層を中心に2015年1月1日に抑制された昇給の回復を行
うと同時に、2018 年度から本府省業務調整手当の手当額について、係長級は基準となる俸給月額の
6%相当額に、係員級は同4%相当額にそれぞれ引き上げることを盛り込むなど、高齢層切り捨て、
本省と地方局との格差拡大の姿勢を貫く内容は到底容認できません。
また、一時金についても若干の引き上げとはなったものの、そのすべてを勤勉手当に加算するもの
であり、成績主義をより助長する内容であることも認められるものではありません。
定員外(非常勤)職員に関しては、7月に勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加する
など、「非常勤職員の給与に関する指針」を改定したものの、報告では「早期に改正内容に沿った処遇
の改善が行われるよう、各府省を指導する」、「慶弔に係る休暇等の検討」にとどまり、改正労働契約
法などに則した雇用の無期転換制度の導入などの要求に全く応えないなど、きわめて不満な内容とな
っています。私たちは、政府が「同一労働・同一賃金」、「均等待遇」の実現を言及するもとで、人事
院に対し、いっそうの賃金・休暇などの労働条件改善と雇用の安定を強く求めるものです。
再任用職員に関しては、月例給・一時金ともに改善するとしたものの、「民間企業の再雇用者の給与
の動向、運用状況を踏まえ、定年の引き上げに向けた検討とも留意しながら、必要な検討」にとどめ
たことは、再任用職員の職務と生活の実態を顧みないものとなっています。また、私たちが要求して
きた生活関連手当等の支給等についても何ら応えず、職場から強い要求が出されている住居手当につ
いても特地手当、寒冷地手当の支給とともに今回も見送ったことは、労働基本権制約の代償機関とし
ての責任を放棄するものであり、人事院の著しく消極的な姿勢を明確にするものとなっています。
公務員人事管理に関する報告では、長時間労働の是正について、具体策を示さず「検討」にとどめ、
私たちが指摘している、「国の行政機関の慢性的な長時間過密労働の根本原因は定員不足」とする定員
問題や超過勤務の上限規制に言及しなかったことも、政府の総人件費抑制政策に肩入れする人事院の
姿勢を浮き彫りにした内容となっています。
また、定年延長に関しては「論点の整理を行うなど必要な検討を鋭意進める」と前向きな姿勢を示
したものの、総人件費抑制政策等の政府方針に対する人事院の姿勢をあらためさせないままでは、慢
性的な要員不足のなかで、低賃金で長時間労働が強いられることが想定されることから、引き続き長
時間労働を是正する実効性と具体性のある対策を求めていくことが肝要となっています。
私たち国土交通労組は、すべての労働者の賃金引き上げ、賃金の地域間格差の是正と景気回復をめ
ざし、全国各地で広範な労働者・国民と共同のとりくみをすすめてきました。くわえて、官民を問わ
ず、憲法のもとで保障された労働者の権利が蔑ろにされるなかで、「公務員賃下げ違憲訴訟」をはじめ
としたとりくみへの結集を強めてきました。
いま求められているのは、人事院が政府の意向に迎合するのではなく、真に第三者機関としての役
割を発揮し、「総人件費削減」方針及び「給与制度の総合的見直し」を即時中止・撤回し、国家公務員
の大幅賃上げを実現させるとともに、長引く経済不況から脱却し、すべての労働者の賃金引き上げの
流れをつくり出すことで、景気を確実に回復させることです。私たちは、引き続き、交通・運輸、建
設産業の労働者、公務・公共サービスにかかわる労働者とともに、官民共同のたたかいをくり広げ、
大きな国民世論を築くことで公務労働者の労働条件改善はもとより、すべての労働者の賃金・労働条
件改善をはじめとした要求の実現をめざします。
そのためにも、国土交通省に働くすべてのなかまのみなさんに、私たちの運動への結集を広く呼
びかけるものです。
= 以上=