2012年9月5日、公正取引委員会は、国土交通省に対して07年の水門工事、09年の公用車運転業務
に続き3例目となる、四国地方整備局管内の工事発注に関わる入札談合等関与行為防止法に基づく、改
善措置要求を出す方針を固めた。
羽田雄一郎国土交通大臣は、奥田副大臣を委員長とする再発防止対策検討委員会を設置して、事実関
係の調査、
背景
原因の解明、
これまでの入札改革の検証と再発防止対策の検討を実施するとしている。
本件では、
「総合評価落札方式」において、入札参加者、評価点、予定価格といった「未公表情報」
を、事務所副所長が業者側に教示し、それを基に業者側で受注調整が行われていたとされている。
「総合評価落札方式」は、公共工事の品質を確保することを目的とする「公共工事の品質確保の促進
に関する法律」
(2005 年 4 月施行
)の施行以降、従来の価格のみによる自動落札方式とは異なり、
「価
格」と「価格以外の要素」を総合的に評価する落札方式であるとして、その採用が進んできた。
その背景には、
厳しい財政事情の下、
公共投資が減少している中で、
受注をめぐる価格競争が激化し、
著しい低価格による入札が急増するとともに、工事中の事故や手抜き工事の発生、下請業者や労働者へ
のしわ寄せ等による公共工事の品質低下に関する問題があったからである。
私たちは、
「総合評価落札方式」の導入で全ての問題が解決するわけではなく、入札段階における技
術評価の透明性の問題は残され、入札準備コストが増加するため、結局は大手ゼネコンが優位となるこ
とが想定され、同時に、減少する公共投資の中では相変わらず熾烈な受注競争が引き起こされ、防災や
災害対応に必要な地域建設業者の淘汰につながる危険性を指摘してきた。加えて、ダンピング受注は、
受注工事で働く労働者の賃金をも引き下げる原因ともなっている。
今回、現職職員が談合に深く関与し、公平性を歪めていたとすれば、行政組織の信頼を大きく損なう
だけでなく、
「品質の確保」を名目に「総合評価落札方式」を導入し、地場の中小建設業を苦しめてき
た制度自体の信頼性を疑わざるを得ない。
また、職場では、入札契約
(発注)方式が複雑化・煩雑化する中、
契約・競争の公平性を高めるため、
人員削減にあっても入札事務担当職員や技術審査担当職員が入札関係資料の確認や評価点の算定に心
血を注いでいる。その労を無にするかの今回の行為は、同じ職場で働く職員はもちろん、正当に競争に
参加している建設業者や納税者である国民を愚弄するものであり、
国民本位の公共事業を目指す労働組
合として、断じて許容することはできない。
国土交通省の発注する公共工事は、
圧倒的に各地方整備局と全国200強の地方の出先事務所が当事
者であることから、対策検討委員会の設置は本省だけでなく、地方整備局にも設置することを強く求め
る。その上で、対策検討委員会には、労働組合や市民団体などの代表も参加し、広く国民に公開される
べきである。
このような不祥事が繰り返し行われるのは、
発注者や元請け企業と対等な契約関係すら結べない建設
産業の体質や、公共事業の入札・契約制度が、品質確保を担保し得ない過度な価格破壊を抑制できない
問題が解決されていないからであり、談合問題の解決には、建設産業全体の民主化が不可欠である。談
合事案にかかる「事実確認」
「原因究明と対策」はもちろんであるが、公共事業や建設産業のあり方も
含めて議論すべきである。
国土交通労組は、建設行政で働く者で組織する労働組合として、国民本位の公共事業を進めるために
も、今後更に努力を重ねて、内部牽制機関としての役割を果たしていく。
2012年9月20日
国土交通労働組合
中央執行副委員長 菅 富美男
(建設部門担当)