2013~2013年人事院報告と意見の申出にあたって~
国土交通労働組合
書記長 笠松 鉄兵
本日、人事院は国会と内閣に対し、公務員給与及び公務員制度に関する報告と「一般職の配偶者帯
同休業に関する法律の制定について」の意見の申出を行いました。
人事院は、公務員給与に関して、俸給表上の官民較差が極めて小さいとして1954年以来59年ぶり
に改定勧告を行いませんでした。
報告にもあるとおり、
「賃下げ特例法」による減額後の給与額にもとづく官民比較では、公務員給与
が民間給与を平均29,282円(7.78%)下回っていることを人事院自ら明らかにしているにもかかわら
ず、政府の「東日本大震災という未曾有の国難に対処するため」ということを大義名分に公務員の賃
金を大幅に削減していることを是認し、改定勧告を見送りました。このことは、国家公務員の労働基
本権制約の「代償機関」としての役割を放棄し、自らの存在意義をも否定したことにほかならず、い
わんや、そうした政治的判断を人事院が主張する必要はまったくなく、
「賃下げ特例法」によって減額
された給与額と民間賃金を比較し、較差是正勧告を行うことこそが「代償機関」として果たすべき当
然の責務です。
これらのことで再度明白になったことは、人事院自ら「公平」
「中立」な第三者機関の役割を投げ捨
て、もはや政府の公務員総人件費削減方針を先導する機関に成り下がったということです。
私たちの賃金は1999年から毎年のように引き下げられ、その額は年間123万円(
「賃下げ特例法」
の減額分含む)にもおよび、国公労連の実施したアンケートでも7割を超えるなかまが「生活が苦し
い」と訴えています。このような公務員労働者の生活と労働の実態を顧みず、政府・財界の公務員総
人件費削減方針に迎合する人事院の姿勢に対し、私たちは満身の怒りを込めて抗議するものです。
さらに今回の勧告では、再任用職員の賃金水準や生活関連手当改善についても見送られ、とりわけ
来年3月に退職されるなかまは年金が無支給となる期間が発生することから、重大な事態をむかえる
にもかかわらず、今後の生活設計の根幹を担う賃金・労働条件をも示さないことは、無責任極まりな
く到底許されるものではありません。
私たちの職場は連年にわたる定員削減や新規採用抑制による慢性的な要員不足、業務の複雑・高度
化がすすむなかで、職員は東日本大震災からの復興や相次ぐ自然災害への対応など国民の安全・安心
を守るために、一丸となって奮闘しており、それは定員外(非常勤)職員も例外ではありません。し
かし、人事院は定員外職員の劣悪な現状を容認し、処遇改善について一切ふれていないことは重大な
問題です。現在、社会全体に非正規労働者が増大し、その賃金・労働条件も劣悪であることが官民を
問わず社会問題となっており、それらの改善にむけて、公務が率先して定員外職員の労働条件改善の
先頭に立つべきです。
加えて、人事院は「給与制度の総合的見直し等」の検討に言及していますが、その内容は、①組織
形態の変化への対応、②地域間の給与配分の在り方、③世代間の給与配分の在り方、④職務や勤務実
績に応じた給与として、人事評価の適切な実施と給与への反映、技能・労務関係職種の給与の在り方
などとなっています。
2005年の給与構造見直しにより俸給表の水準は4.8%引き下げられ、地域手当などが新設されまし
たが、そのことは地域経済にも重大な悪影響をおよぼし、さらなる地域での官民較差と都市部と地方
部における地域間格差の拡大を生み出し、
国民生活の悪化をまねいたことを人事院は認識すべきです。
今回の「給与制度の総合的見直し等」が実施されれば、地域間格差がさらに拡大することや高齢層
職員の賃金をさらに引き下げる危険性を孕んでいます。加えて、高齢層職員の賃金引き下げは、
「職務
給原則」とも矛盾するものと言わざるを得ません。このような百害あって一利なしの「見直し」の検
討は行うべきなく、むしろ、公務職場の労働者の奮闘にむくいるとともに地域経済の再生にも寄与す
る改善こそが必要と考えます。
また、
「給与制度の総合的見直し等」では、行(二)職「技能・労務関係職種の給与の在り方」の検
討も盛りこまれており、国民の安全・安心を守るために日夜奮闘している必要・不可欠な存在である
行(二)職員の賃金を削減することや一層の職員削減と業務委託等の推進を明言したことは、東日本
大震災からの復興や相次ぐ自然災害への対応など国民の安全・安心を守る国土交通行政にも重大な影
響をおよぼすことから、このようなことを人事院が表明することは大問題であり、言語道断で断じて
許すことはできません。
このような理不尽極まりない報告を行う一方で、国家公務員制度改革等に関する報告では自律的労
使関係制度について「給与決定に市場の抑止力が働かない」などと労働基本権制約を当然視するよう
な姿勢を人事院はとっており、このことについても私たちは断固糾弾するとともに、政府に対し、た
だちに国家公務員の労働基本権を全面回復することを強く要求します。
今回の報告は、この間、
「アベノミクス」の影響で賃上げの機運が高まってきているとの報道もなさ
れていることや、8月7日には全国加重平均14円の地域別最低賃金額改定の目安が出されるなかで、
これらのことにも逆行し、水を差すものと言わざるを得ません。
このような人事院の愚行は、直接626万人労働者の賃金・労働条件に影響し、さらには民間労働者
の賃金・労働条件を押さえることにもつながりかねず、労働者全体にかけられた攻撃にほかならない
ものです。
国土交通労働組合は、こうした人事院の姿勢と政府・財界の策動を許さず、国土交通省内ではたら
くすべての労働者をはじめ、交通・運輸産業、建設産業で働く労働者、公務・公共サービスにかかわ
る労働者とともに、官民共同のたたかいをくり広げ、大きな国民世論を築くことで公務労働者の労働
条件改善はもとより、すべての労働者の賃金・労働条件改善をはじめとする要求の実現をめざし、た
たかいをすすめる決意です。
そのためにも、全国の組合員のみなさんをはじめ、国土交通省内のすべての労働者のみなさんへ国
土交通労働組合の運動への結集を呼びかけるものです。
= 以上=