~政府・地域主権戦略会議「広域的実施体制の枠組み」決定にあたって~
国土交通労働組合
「地域主権改革・独立行政法人改革」阻止闘争本部
事務局長 山 﨑 正 人
政府は、12 月 26 日の地域主権戦略会議において、昨年 12 月 28 日閣議決定の「ア
クション・プラン」に基づき、国の出先機関を廃止して、その事務・権限の受け皿となる
「広域的実施体制の枠組み」の方向性を確認した。
その内容は既存の広域連合を視野に、事務・権限の移譲を求めている関西、九州両地域
の意向を踏まえ、地方整備局、経済産業局、地方環境事務所を当面の移譲対象候補として
おり、個別の事務・権限ごとに国の関与をはじめとする諸課題について具体的な検討を重
ね、次期通常国会に特例法案を提出することを目論むものとなっている。
これまで「地域主権戦略会議」の開催は 15 回を数えているが、地方公共団体が行う事
務・事業の予算を具体的に確保する方策について論議されていないばかりか、事務・事業
を行う執行機関の体制や人材配置課題も棚上げされている。
また、交付税や補助金なしには行政運営が困難な過疎に悩む山間部や島嶼などの小規模
自治体住民の税や利用料負担を増加させない具体的な措置も触れられないままである。
このように、今回の「枠組み決定」は極めて不十分な論議のもとでスケジュールの帳尻
あわせで決定されたものに他ならない。そうした論議状況であるにもかかわらず、枠組み
決定を行うことは「国の責任放棄」であり、地方自治体の公共サービスを充実させるどこ
ろか、憲法に基づく地方公共団体の維持すらできなくなることが明らかである。
「地域主権改革」は『地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、
地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにする』
として美辞麗句が並べたてられ、より一層高度な地方自治が実現できるかのように喧伝さ
れている。その一方で地域間格差が生じることは否定していない。
いま、民主党政権が推し進めようとしている「地域主権改革」では、権限移譲と一体で
「国の責任」も地方公共団体に押しつけるものに他ならず、地方自治体相互間で大きな格
差が生じている自治体財政の均衡を図る具体的な措置や国と地方の税収配分にも結論を得
ず、真っ先に議論すべき財源不足と税収不均衡問題については意図的に先送りされている
ことを見れば明白である。
とりわけ、人口減少に悩む慢性的な歳入不足の過疎自治体への産業振興や人口増加に対
する施策が、国の責任として実施されなくなることが危惧され、このまま「地域主権改革」
が進めば過疎自治体では住民に対する税の負担が増加することさえ懸念される。
一方、財界・経済団体は「道州制ビジョン懇談会税財政専門委員会」で国が直轄で道路
や河川などを建設した社会資本の地方移管にあたっては、建設の際に捻出した「建設国債
も移管」、直轄事業以外でも「移管した財源の率に応じて赤字国債も移管」と言及し、国
の予算における国民向けの支出を最小化し財界向け支出の重点化をねらうなど、財界の国
際競争力強化のため国民生活を切り捨てることを求めている。
そうしたもとで、国の責任と役割を求める声も高まってきている。3.11 東日本大震災
の復旧・復興にかかわって、改めて地方整備局など国の出先機関が果たした役割が見直さ
れており、東北圏広域地方協議会をはじめ、各地の基礎自治体の首長が国の出先機関廃止
に反対を表明している。
私たち国土交通労働組合も全国各地で議員懇談や議会要請をはじめ、政府・財界のネラ
イを広く知らせるとりくみに奮闘してきた。国民の権利を保障し、安全・安心を守り、国
土の保全を図るのは「国としての責務」であり、そのための国土交通行政を確立すること
が第一と考えている。
私たち国土交通労働組合は、国民犠牲の「地域主権改革」に断固反対し、国民の生命と
権利、国土を守るために、「国の出先機関廃止」を許さず、引き続き、地域の建設・交通
運輸産業に携わるすべての仲間と共に、国民の生命とくらしを守る出先機関の一層の充実
強化をめざしていく決意である。
以 上