安倍自公政権は、6月 15 日未明から始まった参議院本会議において、実際の犯罪行為がなくて
も、相談や計画をしただけで処罰される「共謀罪」を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法(以下「共
謀罪」法)を強行可決・成立させた。
この「共謀罪」法は、「治安維持法」の現代版とも言われており、日本国憲法が保障する思想・
良心の自由、表現の自由などを侵害するものであるほか、国家権力が恣意的な解釈によって市民の
自由を奪い去ることができる、いわば捜査当局が合法的に国民の日常生活まで監視できる憲法違反
の法律であり、国土交通労組はこの強行成立に断固抗議するものである。
この法案は 2000 年代初めから3回にわたり国会に提出されたものの “内心を取り締まるのか”
など、国民の強い反対の声が広がり、いずれも廃案に追い込まれている。今国会に提出された法案
では、共謀罪の対象となる法律等を 676 から 277 に絞り、「組織的犯罪集団」に限定するなど修正
し、本質を覆い隠してきたものの、金田法務大臣の答弁が二転三転するなど、国会審議の中におい
ても共謀罪創設の目的や必要性についての審議が迷走していた。こうした政府の曖昧な回答に対し、
最新の世論調査でも「共謀罪の説明が不十分」との声が8割に迫るなど、国民の理解はほとんど得
られておらず、国会での審議を尽くすことが強く求められていた。
しかし、安倍自公政権は、今国会の会期を延長すれば、加計学園疑惑等で野党からのきびしい追
及を受け、政権に対するダメージにくわえ、7月に予定される東京都議選にも悪影響を及ぼすとし
て、党利党略で、本来、徹底審議すべき参議院法務委員会での審議を打ち切り、「中間報告」によ
って本会議で「採決」に持ち込むという手段を強行した。
このように、民主的な手続きを経ずに、「数の力」によって「共謀罪」法を強行可決・成立させ
たことは、立憲主義・民主主義を踏みにじる行為であり、断じて許されるものではない。また、国
連人権理事会の特別報告者が示した懸念に対して、何ら論理的な回答をすることなく「個人的な意
見」として一顧だにしない姿勢は、国際社会の信頼さえ失墜させるものである。
この間、安倍政権は、特定秘密保護法の制定によるマスコミ報道への弾圧、海外で戦争ができる
「戦争法」の強行、国民にゆがんだ「愛国心」を植え付けようとする「教育改革」、さらには今回
の「共謀罪」で国民監視の強化とモノ言えぬ国民づくりなどを推し進めてきた。こうしたもとで、
自民党が悲願とする軍事大国化にむけ、じりじりと歩をすすめていることは明白である。
「共謀罪」法の成立により、私たち国土交通省の職場においても、共謀罪にかかわる行政分野に
おいて、国民の監視をさせられることが危惧される。そのことが、森友学園疑惑や加計学園疑惑で
も明らかなように、公正・公平な行政分野に「政府の意向」等の介入を許すと同時に、仮にそのこ
とが誤った内容であっても、異論を唱えることすら許されず、国家公務員が日本国憲法第 15 条2
項にうたわれる「国民全体の奉仕者」であり続けることは叶わない。また、労働組合や市民活動も
「組織的犯罪集団」とされていることから、定員問題などの法律にかかわる内容の要求活動はもと
より、政府方針に反するデモ等の活動への参加をはじめ、環境保護活動や地域における市民運動等
も一切できないこととなるばかりか、いち個人としても、政府方針への日常的な不満さえ口にでき
ないこととなる。私たちが暮らす日本は戦後、日本国憲法のもとで、平和で自由な社会が築かれて
きたが、この「共謀罪」法は、これに逆行するきわめて危険な法律であるといえる。
国土交通労組は、この間、中央、地方において、安倍政権の「戦争する国づくり」の策動と日本
国憲法の改悪を阻止し、平和な社会を未来へ引き継ぐため、あらゆる行動に組織の総力を挙げて結
集してきた。ひきつづき、組合員のみならず、広範な国民のみなさんとともに、安倍政権の暴走を
阻止するため、組織の内外において全力でたたかいぬく決意をここに表明する。

2017 年6月 15 日
国土交通労働組合中央執行委員会