国土交通労働組合
書記長
山﨑 正人
2016年12月5日、東京高裁第17民事部(川神裕裁判長)は、国家公務員の労働基本権制約の
代償措置たる人事院勧告をも無視した給与減額支給措置について、憲法第28条には違反しないとして
合憲と判示し、国公労連との誠実交渉義務違反も認定せず、原告らの請求を全て棄却した
東京地裁判決を支持し、控訴を棄却する不当判決を言い渡した。私たちは、この不当判決に対し、
満身の怒りを込めて糾弾する。
政府は2012年4月以降、2年間にわたり、人事院勧告を無視して平均7.8%(一時金は一律9.77%)
もの給与減額を強行実施した。
これによる給与減額は、一人あたり平均で100万円にのぼる。
この暴挙に対し、2012年5月25日、国公労連と私たち組合員370人は、この措置が憲法に違反するとして、
差額賃金の支払いと損害賠償さらには国公労働者の権利回復を求めて東京地裁に提訴した。
しかし、東京地裁は、2014年10月30日、原告らの請求を全面的に棄却する不当判決を言い渡したことから、
原告らが逆転勝訴をめざして東京高裁に控訴したものである。

国家公務員の労働基本権が不当にも制約されている現行制度において、人事院勧告が唯一の
賃金決定ルールであり、過去の判例では、そのことで国家公務員の労働基本権の制約は
憲法第28条に違反しないとされてきた。
したがって、人事院勧告を無視し可決した「給与臨時特例法」が憲法違反であることは
明白である。にもかかわらず今回の判決は、この間、最高裁が示した枠さえ無視し、
「人事院勧告には拘束力がない。他方で、勤務条件法定主義、財政民主主義に基づき立法裁量がある」
との国の主張を全面的に受け入れ、「我が国の厳しい財政事情」と「東日本大震災に対処する必要性」が
あるとの立法理由を鵜呑みにして合憲判断をしたことは、重大な誤りを犯したものである。

また、憲法・法律の解釈を曲解し事実認定を誤ったうえ、国が使用者責任としての団体交渉を尽くさず、
私たちに一方的な不利益を押し付けたことはILO条約違反であり、国家公務員労働者を
無権利状態におくものであって、断じて容認できない。
国土交通労組はこれまで、144人の原告団を先頭に、国を相手に2年余にわたり、
この「公務員賃下げ違憲訴訟」に結集し、職場と地域のなかまとともにたたかってきた。
こうしたなかで、裁判での口頭弁論では、賃下げによる経済的な被害と、公務・公共サービスを担う
職員の誇りを傷つけ、士気を下げた政府の責任は大きいことや、
私たちが東日本大震災からの復旧・復興をはじめ、国民のいのちとくらしをまもるため、
いつ過労死してもおかしくない勤務状況のなかで、懸命に汗を流して働いてきたことを繰り返し訴えてきた。
そのうえで、ILOに政府あての労働基本権回復と労使協議の重要性についての勧告をさせたことや、
賃下げの不当性を訴える官民共同のとりくみが広がるなど、賃上げ気運を高める一助となったことは、

私たちが築いた貴重な到達点でもある。
今後、たたかいは最高裁の場へと移るが、この裁判は、労働基本権の全面回復など、
国公労働者の権利を取り戻す意味でもきわめて重要なたたかいであり、
私たちは何としても勝利しなければならない。そのためにも、私たちには引き続き、
誰もが安心してはたらき、くらせる社会の実現をめざし、国土交通省内ではたらくすべての
労働者をはじめ、交通・運輸産業、建設産業などではたらく労働者、公務・公共サービスに
かかわる労働者とともに、官民共同のたたかいの輪を広げ、国民世論を大きく構築していくことが求められている。
国土交通省内ではたらくすべての労働者のみなさんへ国土交通労働組合への結集を呼びかけるとともに、
組織強化・拡大をはかりつつ、全国のなかまとともに、職場・地域でよりいっそう奮闘するものである。
以上