2023年8月8日
国土交通労働組合
書記長 後藤 智春
人事院は8月7日、国会と内閣に対し、国家公務員の給与に関する勧告・報告及び職員の勤務時間の改定に関する勧告並びに公務員人事管理に関する報告を行いました。今回の給与勧告では、民間給与が国家公務員給与を上回る官民較差があるとして、月例給を平均3,869円(0.96%)、一時金は0.10月分(年間4.50月分)、引き上げなどが盛り込まれました。2年連続での月例給、一時金の引き上げは、23春闘において、全国の多くの労働者が国民春闘共闘委員会・全労連に結集し、ストライキ権など憲法で保障された労働者の権利を行使したほか、「公務員労働者の大幅賃上げを求めるキャンペーン」をはじめ、官民一体で奮闘しあった結果であり、あらためて、全国のなかまに対し、深く敬意を表するものです。
一方、月例給の引き上げ額は、若年層の給与改善に重点を置きつつ、これまで給与が抑制され続けてきた中高年層を含めた俸給表全体の改定となったとはいえ、物価上昇分にも満たず、生活改善に遠く及ばないものとなっています。くわえて、初任給の改善がなされたものの、先般、中央最低賃金審議会が今年の最賃改定を全国加重平均1,002円(4.3%)に引き上げる目安を答申するなかで、国家公務員の高卒初任給が最低賃金を下回る地域がいまだに存在するなど、この間、人事院に対し、繰り返し主張してきた問題点が解消されていません。さらに、再任用職員及び定員外(非常勤)職員の生活関連手当の支給や、特別料金の全額支給を含む通勤手当の改善が見送られるなど、大いに不満が残るものとなっています。
また、公務員人事管理に関する報告では、「給与制度のアップデート」の骨格案が示され、「人材の確保への対応」、「組織パフォーマンスの向上」、「働き方やライフスタイルの多様化への対応」が盛り込まれ、2024年に必要な措置の成案が示されるほか、在宅勤務等手当の新設に関しては、実費弁償の観点等も含めて、問題点が残されています。さらに、給与水準のあり方や65歳定年延長を見据えた給与カーブのあり方について、2024年以降も引き続き検討することに言及しているほか、職員の能力・実績の強化等、労働条件の重大な変更事項が盛り込まれており、労働組合との合意なしに一方的に決定することは、断じて認められません。このほか、超過勤務の縮減等については、関係機関と連携して積極的にとりくむとしているものの、人事院の責任において、各省庁への指導はもちろん、政府に対し、現行の定員管理政策の抜本的な見直しや必要な要員の確保など、早急かつ実効性のある対策を講じさせていかなければ改善されません。
いま、私たち国土交通行政を担う多くの職員は、相次ぐ自然災害や重大事故への対応をはじめとする国民の安全・安心の確保、コロナ禍も相まって困窮する国民生活を支える各種業務など、限られた要員のもと、業務が複雑・困難化し、長時間過密労働が横行するなど、職場が疲弊するなかにおいても、懸命に業務を遂行しています。こうしたなかで、人事院も人材確保の必要性を認識しており、いまこそ、一人ひとりが意欲とやりがいを持って生き生きと働き続けられる職場環境を整えることが不可欠であり、そのためにも、公務職場の魅力を高める必要があります。しかし、今回の内容は、全国のなかまの労苦に十分に応えるものとはいいがたく、私たち国家公務員の労働基本権制約の代償機関としての人事院の役割発揮がよりいっそう、問われます。
さらに、私たちが求めてきた「緊急勧告」による早急な給与改善に背をむけたほか、人事院が「民間準拠」に固執するなかで、給与改善のための「原資」確保のため既存の手当を切り捨てるなど、根本的な問題が放置されており、昨今、経済界からも、現行の制度の見直しの必要性などに言及する声も出されています。こうした問題点が解消されなければ、労働者全体の賃金引き上げ、ひいては、経済回復への道は遠のくばかりです。
今回の勧告及び報告では、夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直しのほか、不十分ながらも俸給表全体の改定や一時金改善部分が生活補給金に相当する期末手当に配分されるなど、要求が反映された内容もあり、私たちは、この間のとりくみに確信と展望を持つことが重要です。その一方で、今後、「給与制度のアップデート」の成案化や、新たな定員合理化計画の策定などに対し、労働条件の改悪を許さず、改善につなげるよう、秋季年末闘争を強化する必要があります。
国土交通労組は、引き続き、交通・運輸、建設産業の労働者、公務・公共サービスにかかわる労働者とともに、公務労働者の労働条件改善はもとより、すべての国民・労働者の生活改善にむけて、官民共同、さらには、国民的たたかいを大きく広げ、賃金・労働条件改善をはじめとする諸要求の実現をめざします。そのためにも、全国のなかまをはじめ、すべての労働者のみなさんに私たちの運動への結集を呼びかけます。
以上